不貞行為の回数で慰謝料の相場が変わる?判例を元に解説
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記事目次
不貞行為の回数によって慰謝料相場は変わる
不貞慰謝料の金額は、様々な要素が考慮されて決まります。
その考慮要素の一つにあるのが、不貞行為が行われた回数です。
一般的には、不貞行為の回数が多ければ多いほど精神的苦痛は大きくなるといえますから、慰謝料金額は増額方向に考慮されるといえます。
以下では、具体的事例にも触れつつ、不貞行為の回数による金額変動につき解説します。
【判例】不貞行為が1回のケース
不貞行為が1回にとどまったケースでは、慰謝料金額については減額要素として考慮される傾向があります。具体的なケースとしては、以下があります。
東京地方裁判所平成30年1月29日判決・ウエストロージャパン
原告が配偶者の単身赴任先宅を訪れた際に、寝具から避妊具を発見したことがきっかけとなり、不貞行為が発覚。
原告が被告に対して400万円の慰謝料請求をしたのに対し、裁判所は、「宿泊を伴う不貞行為は1度だけであると認められる」として、慰謝料金額を90万円として認定した。
東京地方裁判所令和元年10月3日判決・ウエストロージャパン
配偶者と同じ会社に被告が入社し、大学の先輩・後輩でもあった。
原告が癌の療養のために帰省していた間に、配偶者と被告が夫婦の同居宅で一夜を共にした翌朝に原告がちょうど帰宅してきたのに鉢合わせて不貞行為が発覚。
原告が被告に対して500万円の慰謝料を請求したのに対し、裁判所は、「本件証拠上、…不貞行為は1回のみであ」ると認定して、慰謝料額を130万円の限度で認容した。
東京地方裁判所令和2年1月21日判決・ウエストロージャパン
配偶者が被告とラブホテルに宿泊した帰宅後に、原告から問い詰められたのに対して白状したことから不貞行為が発覚。
原告が被告に対して300万円の慰謝料請求をしたのに対し、裁判所は、不貞行為がきっかけとなって婚姻関係が悪化し、別居及び離婚に至ったと認定したうえで、慰謝料金額を100万円に限って認容した。
もっとも、不貞行為が1回であるとしても、他の相手とも不貞行為を行っている場合や、不貞行為自体に常習性があるような場合には、慰謝料金額が必ずしも低額にはとどまらないこともありますので、注意が必要です。
【判例】不貞行為が2回のケース
不貞行為が2回行われたというケースでも、比較的低額の慰謝料金額が認定されることは多い傾向にあります。
東京地方裁判所平成28年2月24日判決・ウエストロージャパン
原告と配偶者が些細なことから口論に発展した。
その翌日に、配偶者がその元交際相手である被告といたのに対して、原告が被告に対して、配偶者が原告と婚姻していると通告し、配偶者に対して自宅に戻るよう促したが、この制止を振り切って、被告と配偶者が、被告宅で2泊した事案。
原告が被告に対して300万円の慰謝料請求をしたのに対して、裁判所は、100万円の慰謝料金額を認容した。
不貞行為が1~2回にとどまる場合、不貞期間自体も短期間であることが多いでしょう。
後述するように、不貞慰謝料の金額算定にあたっては、複数の要素が考慮されますが、不貞期間も短いということになると、慰謝料金額の減額要素がその分積み重なるため、慰謝料金額は低額に認定される傾向がみられます。
【判例】不貞行為が3回以上のケース
このほか、不貞行為が3回以上といった多数回にわたったケースをご紹介します。
東京地方裁判所平成28年3月25日判決・ウエストロージャパン
配偶者と同じITスクールの講師であった被告が、配偶者が既婚者であることを知り、また原告とも面識があった中で、計3回不貞行為を行った事案(うち最後の1回は、原告からの不貞行為の有無を尋ねる質問に対し、被告が不貞行為を否定し、配偶者との間で会うこともないと約束した後のことであった)。
原告が被告に対して300万円の慰謝料請求をしたのに対して、裁判所は、180万円の慰謝料金額を認容した。
東京地方裁判所平成29年3月22日判決・D1LAW
被告は配偶者の勤務先会社の代表取締役であり、出張であると称して、配偶者とともに外出・外泊を頻繁に行っていた。
原告が被告に対して500万円の慰謝料請求をしたのに対して、裁判所は、「外泊・外出は、平成25年8月以降相当な回数に上っており、原告と配偶者とが別居する平成26年11月12日まで合計約20回に及んでいる」と判示して、200万円の慰謝料金額を認容した。
不貞行為が3回以上となる場合、関係性自体も継続的に維持されていると判断される可能性も高まります。
そうなれば、不貞期間も長期化することが一般的であるといえるため、慰謝料金額としても高額となる可能性が高まります。
不貞行為の慰謝料の相場
慰謝料金額は、不貞行為の回数を含め諸事情により変動しますが、大半のケースでは、50~300万円の幅となることが多いようです。
不貞行為の慰謝料に影響を与える要素
以上では、不貞行為の回数によって慰謝料金額が変わるケースをご紹介しましたが、不貞行為の慰謝料金額は、このほかにも様々な考慮要素が影響します。
以下では、不貞行為の回数以外で、慰謝料金額に影響を与える要素を解説します。
離婚の有無
不貞行為が原因で夫婦が離婚したり、別居したりした場合、不貞行為が夫婦関係の破綻を引き起こしたことになるので、その分慰謝料金額は増額される傾向にあります。
他方で、不貞行為があったにもかかわらず離婚はしていない、また現在も同居しているという場合は、夫婦関係が破綻していないということになるため、慰謝料算定においては減額要素として考慮されます。
注意すべきなのは、元々別の離婚原因が考えられる場合において、不貞行為がされたときです。
この場合、元々の離婚原因によってすでに婚姻関係が破綻していると判断されると、不貞行為(だけ)が離婚の原因となったとは認められず、慰謝料が減額される可能性があります。
この点を意識して、一般に不貞行為に対する反論として、「すでに夫婦関係が悪化していると聞いていた」といった主張がされることがあります。
しかし、こうした主張に対しては、一般に裁判所の判断は厳しく、易々と婚姻関係の破綻を認めはしないところですので、注意が必要です。
夫婦の婚姻期間・態様
不貞行為は、婚姻共同生活の維持という権利または法律上保護されるべき利益に対する侵害行為であると理解されています。
婚姻期間が長い、あるいはいたって円満であったという場合には、不貞行為がこの婚姻共同生活の維持という権利に与えるダメージは大きくなり、配偶者側の受ける精神的苦痛も増大することになるため、慰謝料が増額される可能性があります。
他方、不貞行為の前から夫婦関係が悪かった場合や、婚姻期間が短期間にとどまる場合には、不貞行為によって生じる損害は、夫婦関係が良好な場合と比較して、相対的に小さくなるといえます。
したがってこの場合は、慰謝料が減額される可能性があります。
では具体的にどの程度ならば、「長期」、「短期」と評価されやすいのでしょうか。
婚姻期間については、判例の傾向として、概ね3年以下の場合には、慰謝料金額の減額要素として考慮されるようです。
不貞行為の期間
不貞慰謝料の金額については、もちろん不貞行為そのものの態様も考慮されます。
その中でも不貞行為の期間や回数は、不貞行為そのものの悪質性を示す指標といえます。
不貞行為の回数については上述しましたが、期間についても、一般的には長期であればあるほど慰謝料金額は高額に、短期である場合には低額になる傾向があるといえるでしょう。
どの程度ならば「長期」、「短期」と判断されるかの判例の傾向ですが、不貞期間が数カ月程度、概ね半年以内である場合には、短期間であると評価されるケースが多いようです。
他方で、不貞期間が十数年間にのぼる等、年単位であると認定された場合には、長期間の不貞行為と認定されやすく、慰謝料金額が増額される場合が多いです。
未成熟子の存否
慰謝料金額の算定においては、夫婦間に未成熟子がいるか否かを重要な考慮要素として据える裁判例も多いです。
不貞行為を理由として別居や離婚をすることとなった場合、不貞をされた側の配偶者が今後その未成熟子を育てていかなければならなくなる可能性が非常に高くなるため、それだけ精神的苦痛も大きいとして、慰謝料額が増額される傾向にあるようです。
慰謝料の増額要素として考慮されるに、その子が未成熟子であることが必要です。
過去の裁判例には、(当時は未成年の)18歳の子がいる事案において、慰謝料減額事由として考慮されたと思われるケースも存在します。
また、子がいずれも成人していたり、家を出る等して独立していたりする場合にも、慰謝料減額要素として評価される場合があるようです。
反省の有無
不貞行為をした当事者が、不貞行為について反省しているかどうかも、慰謝料金額において考慮要素とされることが多いです。
不貞行為をされた配偶者側としても、不貞行為者に反省の色が見られたり、謝罪してもらっていたりする場合には、相対的に精神的苦痛は小さい、あるいは幾分軽減されるであろうと考えられます。
そのためこれらの場合には、一般的に慰謝料が減額される傾向にあります。
他方で不貞行為者が謝罪をしていない場合や、不貞関係自体を否認したり、不合理な弁解に終始していたりするような場合には、反省の態度が見られないとして、慰謝料が増額される傾向にあります。
謝罪をした場合や、今後二度度会わないことを約束した場合であっても、たとえばその後にまた隠れて会っていたりすると、謝罪が真意ではなく反省の態度がみられないとして、やはり悪質性が高いと判断され、慰謝料金額が増額されるおそれがあります。
二度目の不貞発覚の慰謝料は高くなる?
同じ相手と再び不貞行為を行っていることが発覚した場合も、それが一度目の不貞行為とは別であるといえるならば、再度慰謝料請求をすることが可能です。
この場合、一度目の不貞行為発覚時点で、「二度と私的に接触しない」といった内容が合意されていれば、その合意に明確に反することになります。
そうでなくとも、二度も同じ相手と不貞行為を行われたというのは、配偶者側にしてみればより一層精神的苦痛を生じるものといえますから、慰謝料金額は高額となる可能性があります。
慰謝料の減額のためにできること
不貞慰謝料を請求された場合、その金額を減額するためにはどのように対応すればよいのでしょうか。
ここでは、不貞慰謝料を減額するために取るべき・取ることが好ましい対策や行動をご紹介致します。
相手方の請求内容や根拠を確認する
まずは、相手方からの慰謝料請求内容とその根拠の確認をすることが重要です。
不貞相手の配偶者やその代理人弁護士からの請求がされた場合、その詳細と請求されている慰謝料額、根拠として指摘されている事実関係をしっかりと理解することが必要となります。
また、相手方が不貞行為の存在を認識するに至った契機や証拠の確認することも大切です。
証拠関係が確固たるものである場合や、そもそも不貞行為自体をすべて認めるのであれば、慰謝料は支払うことを前提に金額交渉をすべきですし、そもそも事実誤認が見受けられるのであれば、不貞行為の存在自体を争うことも検討すべきです。
こうした方針立てをするためにも、まずは相手方の請求内容や証拠関係は、しっかりとチェックしましょう。
誠心誠意、謝罪をする
すでにみたように、不貞行為に関して反省しているか否かは、慰謝料金額算定にあたっての考慮要素の一つです。
既婚者と不貞関係を結んでしまったこと自体が事実であり、不貞行為の存在そのものを争うことは考えていない、という場合には、反省の態度を明確に示すという意味でも、まずは不貞行為によって配偶者に対して迷惑をかけてしまったことにつき心から謝罪することが、慰謝料減額においては有効です。もっとも、先ほど説明したとおり、形だけ謝罪をしたとしても、後から隠れて不貞相手と会っていたりして不貞関係が継続していると、その謝罪も、反省の色がないと判断されることになりかねませんので、注意が必要です。
慰謝料相場を把握する
一般に、不貞相手やその代理人弁護士からの慰謝料請求金額は、最初は数百万円と高額に上ることが多いです。
しかし実際には、請求されたそのままの慰謝料金額が認定されるケースはむしろまれで、当初の請求金額から一定程度減額される場合がほとんどです。
こうした慰謝料相場を知らずに相手方と交渉していこうとすると、そこに付け込まれ、最終的に法外な金額の慰謝料を支払わなければならないおそれも生じます。
しかし、慰謝料金額の相場を知っていれば、相手方からの高額な慰謝料請求にほしいままにされることなく、適切に対応していくことも可能となります。
不倫慰謝料の減額に関するご相談は東京スタートアップ法律事務所
東京スタートアップ法律事務所では、以上の慰謝料金額算定の考慮要素や減額交渉のポイントを押さえ、少しでも有利に交渉を進め、慰謝料金額をより低額に押さえていく交渉をさせていただきます。
弁護士による交渉ですので、ご自身で相手方や弁護士と対峙することによるストレスも回避できます。
慰謝料請求でお悩みの方は、是非お気軽にご相談下さい。
まとめ
以上では、不貞行為の回数をはじめとする慰謝料金額算定の考慮要素、また、慰謝料減額のためのポイント等を、過去の実在するケースも交えご紹介しました。
これらの考慮要素や交渉の要点をしっかり押さえたうえで、不貞相手の配偶者からの請求内容や証拠を確認し、慰謝料の減額交渉をするのか不貞行為自体を争っていくのか、適切に方針立てをして交渉を進めていくことが、不貞慰謝料を請求された際の対策としては重要と言えるでしょう。
- 得意分野
- 一般民事、家事事件(離婚等)、企業法務
- プロフィール
- 大阪府出身
京都大学法学部 卒業
同大学法科大学院 修了
弁護士登録
大阪市内の法律事務所勤務
東京スタートアップ法律事務所 入所