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婚約破棄による慰謝料請求は可能か|手切れ金との違いや相場・税制について解説

投稿日: 更新日: 弁護士 益田 綾乃
婚約破棄による慰謝料請求は可能か|手切れ金との違いや相場・税制について解説
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「婚約破棄をされ、慰謝料を請求したいが、どのような場合に慰謝料請求が可能なのか知りたい」

「婚約破棄をされた場合に支払ってもらえる慰謝料の金額の相場を知りたい」

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

婚約破棄に関する問題は、他人に相談しづらいこともあり、誰にも相談できずに一人でつらい気持ちを抱えてしまう方も多くいらっしゃいます。

今回は、婚約破棄で慰謝料請求が可能な条件、慰謝料請求が認められる典型的な事例、請求できる慰謝料の相場、慰謝料以外に請求可能な費用、慰謝料請求の手順、請求する際の注意点などについて解説します。

そもそも婚約成立の定義と「婚約破棄」とは

婚約破棄に対する慰謝料を請求した場合に、相手が「婚約していない」と反論してくることがあります。

このような場合、慰謝料を請求する側が婚約の成立を証明しなければなりません。

本来、婚約は当事者双方の意思に基づいて成立するので、一方がプロポーズをして、相手がこれを受諾することによって成立します。

しかし、「婚約の成立」が争われる場合には、以下のような事実を示して婚約が成立したことを証明することが必要になります。

  • 婚約指輪を渡した/受け取った
  • 結婚式場の予約をした
  • 両家の顔合わせをした
  • 結納を行った
  • 結婚のために仕事を辞めた
  • 結婚後の新居に引っ越した
  • 新婚旅行を予約した

婚約が成立したことを前提として婚約を破棄した事実があるかを検討しますが、婚約の破棄とは「正当な理由なく結婚をしないこと」を指します。

婚約破棄で慰謝料請求が可能な条件

婚約破棄を理由として慰謝料を請求するためには、前提として以下の3つの条件を充たしていなければなりません。

  • 婚約が成立していたことを客観的に証明できること
  • 婚約を破棄する「正当な事由」が認められないこと
  • 時効が成立していないこと

それぞれの条件について具体的に説明します。

1.婚約の事実を客観的に証明できること

婚約破棄を理由とした慰謝料の請求が認められるためには、婚約が成立していたことを証明する必要があります。当人同士の口約束などのみから婚約の成立を証明することは難しく、客観的な事実を証拠によって証明することが求められます。婚約が成立していたことが認められる具体例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 結納や両家の顔合わせを行った
  • 婚約指輪を渡した・渡された
  • 結婚式場を予約した
  • 新婚旅行の申し込みをした
  • 新居を購入した、嫁入り道具としての家財道具を準備した
  • 結婚を理由に退職した

プロポーズされただけなど口約束の事実しかない場合は、残念ながら婚約の成立は認められにくいでしょう。

2.婚約を破棄する「正当な事由」が認められないこと

婚約とは婚姻の予約という法律行為です。他のさまざまな法律上の契約と同様に、正当な事由なく破棄される場合は、契約不履行として、損害賠償や慰謝料請求をすることが可能です。

婚約破棄の「正当な事由」について明確に定めた法律はないため、民法第770条1項の夫婦の離婚事由を参考に「正当な事由」の有無を判断されることが多いでしょう。民法第770条1項の内容は以下のとおりです。

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

具体的には、請求側に以下のような事情がある場合は、婚約破棄に至る「正当な事由」があったと認められ、慰謝料の請求をすることは難しいでしょう。

  • 不貞行為を働いた
  • 病気や経済状況の急激な悪化があった
  • DVやモラハラをしていた
  • 性的不能を含む、結婚にあたって重要と判断される事実を隠していた

さらに、婚約の場合は、婚約破棄に至るまでに夫婦としての生活がないこともあり、離婚の場合よりも正当な事由として認められる範囲が広い傾向にあります。離婚の場合では正当な事由と認められないようなことでも、婚約破棄の場合は認められることもあるのです。

3.時効が成立していないこと

時効が成立している場合、慰謝料は請求できません

婚約破棄は法律的な観点から、不法行為と解釈される場合と債務不履行と解釈される場合があります。時効成立までの期間はそれぞれ異なり、不法行為の場合は3年、債務不履行の場合は5年です。

どちらのケースに相当するのかは専門家でなければ判断が難しいため、気になる場合は弁護士に相談してみることをおすすめします。

婚約破棄による慰謝料請求が認められる典型的な事例

婚約破棄による慰謝料請求が認められるためには、前述した通り、婚約を破棄する「正当な事由」が認められないことが前提条件の一つでした。では、正当な事由が認められない場合とは具体的にどのような場合なのでしょうか。慰謝料請求が認められやすい典型的な事例について説明します。

1.浮気をして婚約破棄された場合

婚約者が浮気をした挙句、婚約破棄をした場合は、正当な事由があったとは認められず、慰謝料請求が認められる傾向にあります。

婚約が成立している二人の間には誠実交際義務があり、浮気をしたことは、この義務に違反したとみなされます。法律上は債務不履行に該当し、慰謝料を請求できる可能性があります。

2.差別を理由に婚約破棄された場合

国籍・被差別部落出身である等の差別を理由に婚約破棄された場合も慰謝料の請求が認められることが多いでしょう。差別は婚約破棄の正当な事由に当たりません。過去には、違法性が極めて高いとして高額の慰謝料の支払いが命じられた事例もあります。

3.身勝手な理由で婚約破棄された場合

性格の不一致を理由に一方的に婚約を破棄された場合や、マリッジブルーが原因で婚約を破棄されたりした場合も、正当な事由がないとして慰謝料の請求が認められる傾向にあります。

ただし、双方の話し合いの結果、婚約を解消した場合は、これらが原因でも慰謝料請求はできません。

4.両親の反対によって婚約破棄された場合

親からの反対も正当な事由には当たらず、慰謝料請求は認められやすいでしょう。特に相手の親が悪質な場合、共同不法行為として、親に対しても慰謝料を請求できることがあります。

婚約破棄で請求できる慰謝料の相場

婚約破棄による慰謝料の相場や、相場よりも増額になりやすい要因について説明します。

1.婚約破棄によって請求可能な慰謝料の相場

婚約破棄による慰謝料の金額の計算方法について、明確に定めた法律はありません。裁判などの法的手続によって請求する場合は、過去の類似事件を参考に決められることになり、その場合の慰謝料の相場は、30万円~300万円程度です。

婚約を破棄した側の違法性が高いと認められると、慰謝料は増額になることが多いでしょう。

2.慰謝料の金額が増額される要因

慰謝料の金額が増額される要因として、主に以下のようなことが挙げられます。

  1. 交際期間が長い
    交際期間が長い場合は、婚約破棄により受ける精神的苦痛が大きいとして、慰謝料金額は増額になる傾向にあります。
  2. 結婚の準備を進めていた
    結婚式場の予約や新婚旅行の申し込み、新居の契約や引っ越しの準備など結婚の準備が進んでいた場合も、婚約破棄された側が受ける精神的苦痛が大きいと判断され、慰謝料金額は増額になる傾向にあります。
  3. 婚約を機に退職していた
    婚約をしたことで退職した場合も、相場よりも高い慰謝料の支払いが認められる可能性が高いでしょう。退職までしたということは、当然、結婚するものと思っていたはずで、その期待を裏切られたことによって受ける精神的苦痛は相当なものと判断されるためです。
  4. 妊娠・中絶・出産した
    妊娠、中絶していた場合も慰謝料は高額になることが多いでしょう。妊娠や出産によって女性の人生設計が大きく狂う可能性もあり、被る精神的苦痛も甚大だと判断されるためです。
  5. 心身の健康状態の悪化
    婚約者から正当な事由もなく婚約破棄されたことで、精神的苦痛から体に不調をきたした場合や、うつ病などの精神疾患を発症した場合も、慰謝料は増額される傾向にあります。
    このような場合は、婚約破棄により心身の健康状態が悪化したことを証明するため、医師による診断書を取得しておきましょう。
  6. 相手の年収が高い
    婚約者の年収が高い場合は、認められる慰謝料も高額になる傾向があります。

婚約破棄により請求可能な慰謝料以外の費用

婚約破棄によって請求できるのは、慰謝料だけではありません。相手に請求できるその他の費用として、以下のようなものが挙げられます。

  • 婚約指輪代
  • 式場・披露宴会場のキャンセル料
  • 新婚旅行のキャンセル料
  • 新居や家具の購入費用
  • 結納金

上記以外でも、結婚や結婚後の生活のために費やした費用は請求することができます。

1.婚約指輪

婚約指輪の授受があった後に婚約破棄となった場合、婚約指輪の返還を求めたり、損害の賠償を請求することはできるのでしょうか。

男性側に婚約破棄の原因がある場合(男性の浮気や男性側からの理由無き婚約破棄など)は、女性に対し婚約指輪の返還を求めることはできないと解されています。

反対に、婚約指輪を受け取った女性側に婚約破棄の原因がある場合(女性の浮気など)は、男性は、女性に対し婚約指輪の返還を求めることができます。

女性が指輪を処分してしまった場合は、指輪の価格相当額について損害の賠償を請求することができます。

2.結納金

結納金とは、一般的に、男性の家から女性の家に対して、結婚準備・婚約の確証・結婚後の両家の絆を深めるために贈られるお金をいいます。

結納金を贈った男性側の原因で婚約破棄となった場合、女性側に対して結納金の返還を求めることは、道理上許されないと考えられています。

他方、女性側の原因で婚約破棄となった場合や、婚約をした当事者双方の合意で結婚しないという結論に至った場合は、女性側は男性側に対し、受領した結納金を返還しなければなりません。

3.結婚式場や新婚旅行のキャンセル料

婚約破棄に伴い発生する結婚式場や新婚旅行のキャンセル料は、婚約破棄の原因を作った側(婚約破棄の責任がある側)が全額負担します。

契約名義や、すでに代金を支払っていた場合にどちらが支払った(または、二人で出し合って払った)か等の事情は関係ありません。

基本的には上記のように婚約破棄の原因がある側がキャンセル料全額を負担しますが、婚約していた当事者で話し合って負担割合を決めて支払いをすることも可能です。

4.妊娠していた場合の子の養育費

婚約者の子供を妊娠したにもかかわらず婚約破棄となった場合、子供を養育する親は、他方に対し、子供が産まれた月以降養育費の支払いを請求することができます。

婚約破棄の原因が男性側女性側のどちらにあるかは問わず、法律に則って子供を育てる側が請求します。

婚約破棄の場合、出産する女性側が子供を養育する場合が多いのが現状ですが、男性側と女性側の収入に応じて養育費を決定することになります。

養育費を請求する前提として、父親に子供を認知させ、父子関係を明確にする必要があります。

慰謝料と手切れ金の違いとは

婚約破棄の際に問題となるものとして、「手切れ金」があります。

慰謝料と混同されることがありますが、慰謝料と手切れ金は性質が異なります。

慰謝料と手切れ金の違いを説明していきます。

1.慰謝料とは

慰謝料は、民法709条・710条を根拠に、相手に対して、精神的苦痛を金銭に換算した金額を請求するものです。

損害賠償には様々な種類がありますが、慰謝料は、精神的苦痛を慰謝するため、金銭を支払うという性質のものです。

慰謝料は、法律に規定された条件を満たすことによって請求することができます。

法的に慰謝料請求権が認められるにもかかわらず相手が慰謝料の支払いに応じない場合には、調停や裁判で支払いを求めることができます。

2.手切れ金とは

手切れ金とは、人間関係を清算するために支払われる金銭のことをいいます。

例えば、恋人関係にあった男女が、「恋人関係を清算するために手切れ金を支払う」等、関係を解消するための手段の一つとして使われます。

手切れ金は、慰謝料のように法律に基づいて支払われる金銭ではなく、個人の意思で支払うものです。

よって、相手に対して支払いを強制することはできません。

3.解決金とは

解決金とは、慰謝料や手切れ金を含む広い概念です。

弁護士を介してトラブルを解消する際の書面に、「解決金として」と金銭支払い原因を記載することがあります。

婚約破棄による慰謝料請求の手順

婚約破棄をした相手に慰謝料を請求する場合、どのように行えばよいのでしょうか。実際に慰謝料を請求する際の手順を説明します。

1.婚約解消までの経緯を整理する

まずは、冷静に婚約破棄されるまでの経緯を整理してみましょう。

婚約が成立していたと客観的に認められる状態にあったか、自分の方に婚約を破棄される正当な事由がなかったかなどを確認します。

自分で判断するのが難しい場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

2.客観的な証拠を集める

自分の状況が、慰謝料請求可能であると判断できた場合は、不当に婚約破棄されたことを客観的に証明するために有効な証拠を集めましょう。

証拠は以下の2つの事実を証明できるものが必要です。

  • 婚約が成立していたことを証明できる証拠
  • 正当な事由がなく婚約破棄されたことを証明できる証拠

婚約が成立していたことを証明するための証拠としては、婚約指輪や結婚式場や披露宴会場の申込書類、新居の契約書類などが挙げられます。

婚約破棄されたことを証明できる証拠については、浮気が原因の場合は、相手の浮気の事実を証明できる写真やメールなど、差別や身勝手な理由で婚約破棄された場合は、相手がそのような内容を記載しているメールなどが有効です。

しかし、実際には、婚約の事実があったことを客観的に証明することは難しいものです。どのようなものが証拠として有効なのかわからない場合や、手元に証拠になりそうなものが見つからない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

3.慰謝料金額を決めて相手に請求する

客観的な証拠を集めることができたら、慰謝料金額を決めて相手に請求します。

前述した通り、婚約破棄を理由に請求できる慰謝料の金額には明確な決まりはありません。そのため、理屈としては、いくら請求してもよいことになります。しかし、高額な金額を請求しても、支払ってもらえなければ請求する意味がありません。相場を参考に現実的な金額を請求するとよいでしょう。

慰謝料を請求する際は直接話し合いの場を設ける場合もありますが、書面で請求することをおすすめします。書面という形で残しておいた方が、万一、トラブルに発展した場合に、証拠として利用できるからです。

4.慰謝料請求調停を申し立てる

相手に慰謝料を請求したものの、相手が応じない場合や、交渉が進まない場合は、裁判所に調停を申し立てることを検討します。

調停手続では、裁判所の調停委員が、婚約破棄に至るまでの双方の事情や経緯をヒアリングします。その上で、解決案を示してくれたり、助言しながら話し合いを進めてくれたりして、解決へ導いてくれるでしょう。

5.訴訟を提起する

調停における話し合いがまとまらなければ、裁判所に訴えを提起することになります。裁判では、裁判所が争点を整理しながら、双方の主張を聞き、最終的に判決を下します。訴訟になると、問題解決までの長期化は必至で、通常6カ月から1年以上は要することになるでしょう。

裁判手続は、自分で行うこともできますが、書類や証拠の提出など慣れない人には手間がかかることも多く、多大な時間と労力を割く必要があります。

そのような負担を避けたい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、全ての手続を代行してもらえるため、解決までにかかる負担を大幅に軽減することができるでしょう。

婚約破棄による慰謝料を請求する際の注意点

婚約破棄された方は、どうしても感情的になるものです。仕方のないことですが、あまりに感情的になって、相手に慰謝料を支払ってもらえないなら、何の解決にもなりません。

自分の気持ちが落ち着くまで待ってから、相手方が現実的に支払い可能な慰謝料金額を請求し、確実に支払ってもらうことが大切です。

1.自分の気持ちを整理すること

婚約破棄をされた側は、怒りや悲しみ、悔しさなどから感情的になってしまうものです。すぐにでも慰謝料を払わせたいと気持ちがはやるのもわかりますが、感情に任せて動いてもなかなか上手く行きません。特に慰謝料をめぐる相手との交渉は、感情的になればなるほど難航するでしょう。

一度自分の気持ちを整理し、冷静さを取り戻すことが、最善の結果を得るためにも大切です。

2.無理な要求は控えること

婚約破棄の慰謝料については、明確な決まりがないこともあり、高額な金額を請求したくなるものです。必要以上の謝罪を求めたくなることもあるでしょう。

しかし、あまりに無理な要求をしてしまうと、最初から相手方が話し合いに応じず、望む結果を得ることが難しくなります。話し合いがこじれて、問題が必要以上に長期化することもあるでしょう。どんなに相手に償わせたい気持ちがあっても、無理な要求は控えた方が得策です。

どうしても感情的になってしまうようなら、弁護士に依頼することを検討するとよいでしょう。弁護士に依頼すれば、相手と直接関わることなく、問題を解決してもらえます。

3.婚約の成立を証明することが困難

婚約破棄の慰謝料請求は、婚約が成立していたことを前提として行います。

そのため、婚約破棄の慰謝料を請求する側が、婚約が成立していたことを証明する必要があります。

婚約をした当事者にとっては、「あの日、プロポーズされた」「あの日、結婚の約束をした」ということは明確であり、婚約が成立したことは何ら疑いようがない事実です。

しかしながら、慰謝料を請求したが相手が慰謝料を支払わないという場合は、法律に則って金銭の支払いを請求することになります。

そのため、これまでの二人の事情を何も知らない他人から見ても、「これは、婚約が成立していたのだな」と分かるような事実を証明することが必要になるのです。

4.婚約の成立を証明するための証拠収集

相手が慰謝料の請求に応じない場合、裁判で支払いを命じる判決を出してもらうことになります。

そのため、裁判所に証拠を提出して、婚約が成立した事実や、婚約破棄することになった理由が相手にあることを証明していきます。

婚約指輪の授受、結婚式場の予約、結納を交わした事実、両家の親と顔合わせをした事実、新婚旅行の予約などが、婚約が成立していたことを証明する証拠となります。

また、婚約破棄の原因が相手にあることを証明するための証拠が必要になる場合もあります。

婚約者が浮気をした場合や、婚約者からDVを受けた場合等には、それらの事実も他人から見て分かるような証拠を提示する必要があります。

5.慰謝料請求の手順を知っておく

婚約破棄を原因とする慰謝料請求は、弁護士を通さずに話し合いで行うことも可能です。

しかし、数十万円〜数百万円という請求にすんなりと応じてくれる例はそれほど多くはなく、相手が婚約は成立していなかったと主張したり、絶対に支払わないと主張する可能性があります。

このような場合には、お互いに弁護士を立てて話し合いでの解決を試みたり、それでも応じない場合は、裁判所で行う調停や訴訟によって解決することになります。

6.慰謝料請求の費用が心配なときはどうすればいいのか

婚約破棄の慰謝料請求を弁護士に依頼する場合、相手との話し合いをするための弁護士費用や、訴訟を提起するための弁護士費用などがかかります。

また、相手から慰謝料を受け取れた場合には、弁護士に対して成功報酬を支払う必要も生じます。

そのため、慰謝料としていくらくらい受け取れそうか、ということと、弁護士費用がいくらくらいかかるのかをあらかじめ調べた上で、弁護士に依頼して請求するのかを検討すると良いです。

弊所では無料相談の際に弁護士費用の見積額をお伝えするようにしています。

7.慰謝料請求が長期化することもある

婚約破棄の慰謝料請求が訴訟に発展した場合、解決まで長期間かかる場合があります。

お互いの主張に食い違いがある点(「争点」と呼ばれます)について、双方の弁護士が裁判官に対して主張書面や証拠を提出し、争点一つずつに対してお互いの主張が完了した段階で、裁判官から和解を提案されたり、裁判官に結論を決めてもらいます。

不倫などの慰謝料請求訴訟にかかる期間はだいたい6カ月~1年くらいです。

争点が多い場合は1年以上かかる場合もあります。婚約破棄などで、婚約の成立自体を争い、さらに婚約破棄の原因についても争いがあるような複雑な場合にも1年を超えて長期化することがあります。

婚約破棄の理由が不貞行為であれば慰謝料は原則非課税となる

給与を受け取れば所得税、相続した場合は相続税、贈与を受けた場合は贈与税を支払う必要が生じる可能性があります。

慰謝料の相場は50万円〜200万円くらいですので、高額の金銭を受領することになります。そのため、何らかの税金を納めなければならないのではないかと不安に思われる方も多くいらっしゃいます。

婚約者の不貞行為などを原因として慰謝料を受け取った場合、慰謝料を受け取ったことに対して税金はかかりません(非課税です)。

所得税法施行令第30条に、原則的に非課税である旨が定められているのです。

婚約者の不倫などを原因として発生した慰謝料は、精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。

本来、精神的苦痛を金銭に換算することができませんが、個々の事案をこれまでの裁判例などに照らして、損害賠償金額としていくらが妥当であるかを検討することになります。

精神的苦痛を慰謝するために支払われる金銭であることを理由に、非課税として扱われます。

婚約破棄による慰謝料の請求に関するよくある質問

1.婚約破棄は違法行為?

婚約を破棄する行為そのものは、違法ではありません。婚約は当事者が「結婚しよう」と二人で決めることで、これによって「必ず結婚しなければならない」と法律で当事者の行動が制限されることはありません。

ただ、婚約というのは人生の中でもとても大きな決断ですし、具体的に結婚に向けて準備を進める中でお金の支払いも生じます。

結婚するために仕事を辞めたり、故郷を離れて新婚生活の準備を進めていたのに、いきなり婚約を破棄されたなどの事案もあります。

このような場合、実際に支払ったお金や物の受け渡しについては、婚約破棄の原因を作った側が基本的に負担すべきだと考えられています。

また、大きな精神的苦痛を伴う場合が多いため、精神的苦痛に対しては婚約を破棄された側に慰謝料を請求する権利が発生することになります。

2.不貞行為は違法行為?

婚約者がいるにもかかわらず婚約者以外の人と肉体関係を持つ行為(「不貞行為」と呼ばれます。)自体は、違法ではありません。

婚約をしたら婚約者以外の人と肉体関係を持ってはいけないと法律で行動を制限されているわけではないので、「違法」ではありません。

しかしながら、婚約は結婚して家庭を築いていくことの約束ですから、平穏な家庭を築いていくことについて、婚約者は権利を持つと考えられます。

よって、不貞行為そのものは違法ではありませんが、不貞行為をされたことによって精神的苦痛を被った場合には、法律に基づいて慰謝料を請求することができます。

まとめ

今回は、婚約破棄で慰謝料請求ができるための前提条件、慰謝料請求が認められる典型的な事例、請求できる慰謝料の相場、慰謝料以外に請求可能な費用、慰謝料請求の手順、請求する際の注意点などについて解説しました。

婚約破棄による慰謝料請求は、請求する側が感情的になりやすいこともあり、当事者同士での解決は難しいことが多いものです。また、裁判所に訴えを起こす場合は、請求根拠の立証がやや難しいため、弁護士に依頼した方がよいことも多いでしょう。婚約破棄をされて、慰謝料請求することを考えている場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

私達、東京スタートアップ法律事務所は、婚約者から婚約破棄されたことにより精神的な苦痛に悩まされている方々を全力でサポートしております。慰謝料の交渉実績を豊富に持つ弁護士が、早期解決に向けて、法律の専門知識と交渉術を駆使して相手との交渉にあたります。秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも対応しておりますので、安心してご相談いただければと思います。

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益田 綾乃
執筆者 弁護士益田 綾乃 第二東京弁護士会 登録番号62238
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得意分野
契約法務 、 人事・労務問題 、 紛争解決 、 債権回収 、 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 債務整理
プロフィール
東京都出身
東京理科大学理学部 卒業
野村證券株式会社
成蹊大学法科大学院 修了
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