不貞相手から求償権を行使されたら拒否できる?求償権を行使できないケースについても解説
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記事目次
「不貞をしたら、配偶者が不貞相手に慰謝料を請求した。
後日不貞相手から請求通りの慰謝料が支払われた」
一見すると不貞問題は円満に解決したと思われます。
しかし、後日、不貞相手からあなたに求償権を行使する旨の通知が届くことがあります。
せっかく、配偶者が、不貞相手から慰謝料を受け取り不貞問題は解決したと思っていたのに、新たな問題が勃発するのです。
不貞をされた方にとっては耐えがたい苦痛となり、再び夫婦関係に亀裂が生じる可能性があります。
そこで今回は、不貞相手から求償権を行使された方に向けて、求償権を行使された場合にやるべきことや、拒否できるかどうか、無視した場合のリスクなどを解説します。
不貞相手から求償権を行使されて困っている方は、ぜひ参考にしてください。
求償権とは
不貞行為の求償権とは、慰謝料を全額支払った不貞行為の当事者が、もう一方の当事者に対して慰謝料の一部の負担を求める権利です。
不貞行為は、複数の人間によって行われる不法行為です。
これを「共同不法行為」といいます。
共同不法行為の被害者は、共同不法行為の全員に、その損害額を責任割合に応じて請求することもできますし、1人に全額を請求することもできるのです。
共同不法行為によって生じた慰謝料を「不真正連帯債務」といいます。
求償権は、共同不法行為の損害賠償金(不貞行為の場合は慰謝料がほとんどを占める)を支払った人が取得する権利です。
不貞行為の慰謝料をすべて支払ったのが、不貞相手であれば不貞相手が取得しますし、ご自身が支払ったのであればご自身が取得します。
求償権を行使できない場合がある?
求償権を放棄した場合と求償権の時効が成立した場合には、求償権を行使できません。
求償権の問題に直面した場合には、この2つの場合を理解しておくことが重要です。
本記事では、それぞれの場合について述べます。
求償権を放棄したとき
不貞行為を行った当事者の一人が不貞行為をされた者との間で、求償権を放棄するとの条件で示談する場合があります。
この場合には、不貞相手に対して求償権を行使できません。
示談が成立した後に示談内容を変更することは困難です。不貞相手に対して求償したいのであれば、求償権を放棄する条件での示談をしてはいけません。
求償権の時効が成立したとき
求償権を行使できることを知った時から5年が経過すると、時効が成立します。
具体的には、不貞行為の被害者に対して慰謝料を支払ってから5年が経過した場合、求償権を行使できなくなります。
ただし、5年が経過してしまったとしても、求償できる場合がありますので、あきらめずに一度弁護士に相談してみましょう。
求償権を行使する手順
求償権を行使する手順は、①不貞相手に請求する、②不貞相手との話し合う、③求償に応じてもらえない場合に裁判を起こす、という三段階に分けられます。
各段階における対応の仕方や注意点について解説します。
不貞相手に請求
まずは、不貞相手に連絡して、求償権の行使によって金銭の支払いを請求すると伝えましょう。
連絡方法としては、電話でも問題ないですが、証拠になりやすい書面やメッセージ機能を用いるべきです。
急に「求償権の行使」と言われても、何のことか分からない方もいます。
このような方には、求償権の説明をする必要があります。
不貞相手と話し合う
次に、不貞相手との間で条件について話し合います。
主に問題となるのは負担割合です。なぜなら、負担割合に応じて不貞相手に支払ってもらう金額が変わるからです。
通常は50%ずつ負担することが多いですが、不貞相手の負担割合を増やしたい、あるいは自分の負担割合を減らしたい場合には、弁護士にご相談ください。
求償に応じてもらえない場合は裁判を起こす
そもそも不貞相手が求償に応じてくれない、あるいは求償自体には応じてくれたものの、負担割合等で争いがあり、話し合いによる解決が困難といった場合には、裁判を起こすことになります。
もっとも、弁護士に依頼することで、話し合いによる解決につながることもありますので、どの段階からでもお気軽にご相談ください。
求償権を行使する際の注意点
求償権を行使する際の注意点としては、不貞相手に接触することで不貞行為の被害者との争いが再燃する場合、裁判になると手数料が生じる場合、以上2つの場合があげられます。
それぞれの場合について述べます。
不貞相手に接触することで争いが再燃する場合も
求償権を行使する際、不貞相手に連絡をとることになります。
求償権は、法律上認められている権利ですので、請求者との示談内容に反しない限り、不貞相手に連絡を取ることは法律上問題ありません。
しかし、請求者の目線に立って考えることも重要です。
請求者自身は、法律の専門家でない場合が多く、不貞をされた側となります。
そのため、求償権の行使を目的とした不貞相手への連絡であったとしても、請求者の悪感情を強めるおそれがあります。
これによって、解決したはずの請求者との間における争いが再燃する場合があります。
以上から、求償権の行使を行う際には、請求者の悪感情を強めるおそれといった法的な問題以外の点にも注意が必要です。
裁判をする場合は手数料がかかる
求償権を行使したとしても、不貞相手が求償に応じない場合には、裁判を起こしてお金を回収することになります。
裁判を起こす場合、まずは、裁判所に支払う手数料や弁護士費用がかかります。
また、裁判を起こしてから判決がもらえるまでにある程度時間を要します。
さらに、事案によっては、請求が認められない場合もあります。
加えて、不貞相手がめぼしい財産を持っていなければ、求償を認める判決がもらえたとしても、お金を回収できない場合もあります。
以上をふまえると、「裁判を起こしたけれど、時間がかかったうえに、結局お金を回収できなかった」という、いわゆる踏んだり蹴ったりな状況も想定されることになりますので、注意が必要です。
あらかじめ求償のための備えをしておく
請求者との話し合いの段階や裁判を起こされた段階で、あらかじめ求償権の行使に備えておくことが可能です。
例えば、請求者との話し合いに不貞相手にも参加してもらい、不貞相手との責任割合についても三者間で合意する方法が考えられます。
このような三者間合意ができなくとも、請求者との話し合いの段階で、「求償権を行使する際に、不貞相手に連絡することになる」点をあらかじめ説明しておくことも考えられます。
また、慰謝料請求の裁判を起こされた段階においては、不貞相手に「訴訟告知」を行うことができます。
「訴訟告知」を行うことで、不貞相手が裁判に参加しない場合にも、判決の効力を及ぼすことができ、求償権の確保につながります。
相手方は求償権を行使されたら拒否できないのか?
原則として、不貞行為が事実であれば求償権の行使を拒むことはできません。
支払いを拒んだり、無視し続けたりしていると、裁判を起こされる可能性があります。
実際に裁判を起こされる例はそれほど多くはありませんが、無視したからといって拒否することはできないことを理解しておきましょう。
ただし、ご自身も不貞行為の慰謝料を支払っていた場合は、求償権の行使を拒否することができます。
例えば、あなたの配偶者が、不貞相手とあなたのそれぞれに100万円ずつの慰謝料を請求しており、あなたがそれに応じていた場合です。
その場合は、慰謝料を支払った証拠を用意して、不貞相手に提示しましょう。
求償権を行使されないためにできること
求償権を行使されないためにできることを解説します。
示談交渉の段階でこれらの対策を講じておけば、求償権の行使を回避できる可能性が高まります。
減額交渉に応じて求償権の放棄を求める
求償権を放棄することは、不貞相手にとっては大きな金銭的損失となります。
なんのメリットも提示せずに「求償権を放棄してください」と交渉しても応じてもらえる可能性は非常に低いです。
ですので、求償権の放棄を求める場合は、慰謝料の減額交渉とセットにしましょう。
ただし、慰謝料を請求する権利は、あなたではなく不貞行為の被害者にあります。
不貞行為の被害者が求償権の放棄を望んでおり、慰謝料の減額を認めている場合のみ、この方法が有効です。
配偶者に慰謝料を支払う
確実に、求償権の行使を回避できるのが、配偶者に対して慰謝料を支払っている場合です。
それぞれが適正な慰謝料を被害者に対して支払っていた場合は、どちらにも求償権は発生しませんので、求償権を行使される前に配偶者に慰謝料を支払っておきましょう。
その場合、慰謝料のうちご自身の責任の割合分のみを支払うことになります。
求償権に関する悩みを弁護士に相談するメリット
不貞相手の求償権に関する悩みは、弁護士に相談することが望ましいと考えます。
弁護士への相談には、以下の様なメリットがあります。
不貞相手との接触を回避できる
求償権を行使する側と行使される側に共通するメリットとして、お互いに不貞相手との直接の接触を回避できる点があげられます。
不貞を行った者同士が直接やり取りをしている場合、配偶者としては、たとえやり取りの内容が求償権の行使に関する内容に限られていたとしても、「また不貞をしているのではないか」と疑ってしまうことがあります。
このような疑いを生じてしまうと、求償権を行使する側としては、一度解決した不貞行為の被害者との間の争いが再燃してしまうおそれがあります。
他方で、求償権を行使される側としては、不貞発覚後、離婚せずに夫婦関係を再構築しているところに不貞相手から求償の通知が届いてしまうと、再構築に支障をきたすおそれがあります。
しかし、求償権を行使する側も行使される側も、弁護士に求償に関する交渉を一任すれば、不貞相手との接触を回避することができる結果、上述のリスクを減らすことができます。
また、費用がかかったとしても、弁護士に交渉を一任して、誠意を示すことが重要です。
求償権放棄の交渉が成功する確率が高まる
不貞相手が求償権を行使することを阻止したい場合は、示談交渉において求償権の放棄を申し入れなければなりません。
求償権と引き換えに慰謝料の減額に応じるという形になることがほとんどであり、高い交渉力が求められます。
当事者同士で話し合うと、感情的になって話が進まず新たなトラブルが発生してしまうリスクがあります。
弁護士が交渉することで、求償権の放棄を冷静に申し入れることができます。
ただし、配偶者が慰謝料の減額に了承している場合に限ります。
後日トラブルが発生しないように交渉を進めることができる
不貞相手の求償権の行使に応じる場合は、求償に応じるだけでなく、双方が今後は一切金銭的な請求を行わないことなどを約束しておく必要があります。
お金のやり取りだけでなく文書での取り決めが必要ですので、弁護士に交渉を一任しておくと安心です。
弁護士に求償権に関する交渉を一任して、その内容を文書にしておくことで、配偶者に、「不貞相手とは一切連絡を取ることがないこと」と証明することができます。
まとめ
求償権を行使される側としては、配偶者に対して慰謝料を全額支払った不貞相手が、慰謝料の一部を求償してきた場合、それを拒否することは難しいです。
請求を無視し続けていれば裁判を起こされる可能性があります。
また、夫婦が離婚していない場合は、不貞相手と再び接触を持ったことで、夫婦仲が再び険悪になってしまう懸念もあります。
ですので、不貞相手が求償権を行使した場合は、支払いに応じる必要があります。
配偶者が不貞相手とのやりとりを望まない場合は、弁護士に交渉を一任するとよいでしょう。
配偶者と求償権を行使する予定の者が、まだ示談交渉の最中であれば、配偶者が、不貞相手に慰謝料を請求する際に、求償権の放棄と慰謝料の減額をセットで申し入れることで、求償権を放棄させることも可能です。
配偶者が慰謝料の減額を認めない場合は、あなたが配偶者に対して、慰謝料を支払っておけば、不貞相手の慰謝料の求償を回避できます。
求償権を行使する側としては、不貞相手と直接やり取りをすることにより、不貞相手の配偶者の悪感情を高めてしまい、一度解決したはずの争いが再燃するおそれがあります。
不貞相手から求償を無視し続けられた場合には、裁判を起こすことも検討することになります。
求償権を行使する側も行使される側も、求償権に対する対処法は、夫婦が離婚しているかどうか、現在の示談状況などによって異なりますので、不安な方、求償権をどうすればいいのか分からない方は弁護士にご相談ください。
個別の状況を確認した上で、適切な対処法をアドバイスいたします。
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- 契約法務 、 人事・労務問題 、 紛争解決 、 海外進出法務 、 債権回収 、 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
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日本大学法学部 卒業
上智大学法科大学院 修了
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