内容証明郵便を無視・受取拒否すると不利になる?対処法や法的効力を解説
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記事目次
2018年の司法統計によると離婚調停を申し立てた6万3902人のうち9751人が申立ての動機の1つを「異性関係である」としています。
全体の約15.2%が配偶者の男女関係に悩んでいたという計算です。
この統計からわかるように、不倫に及んでしまう方は決して珍しくはありません。
では、不倫をしてしまい、慰謝料を請求する内容証明が送付されたらどうすればよいのでしょうか。
本記事では、不倫トラブルの慰謝料請求の内容証明郵便が届いた方に向けて、今後起こり得ることと対処法を解説します。
不倫の慰謝料請求の内容証明郵便を無視するとどうなるのか
慰謝料請求の内容証明が届いたとき、多くの人はその形式的な書面に心理的なプレッシャーを感じるでしょう。
ですが、内容証明自体には法的拘束力はありませんので、受け取ったからといって、何らかの義務が生じることはありません。
不倫慰謝料の内容証明は、あくまで慰謝料を請求する意思を相手に伝えるための郵便で、自発的な対応を促すものです。
そのため、内容証明を無視したとしても罰則等はなく、すぐに預貯金や給与が強制執行されることもありません。
不倫慰謝料の内容証明郵便とは?
内容証明郵便は、日本郵便が提供する郵便サービスの1つで、送付した内容文書の写しを郵便局で保管しておき、送付した内容を証明するというものです。
これに配達証明を付ければ相手方に配達された日時を証明することもできます。
不倫慰謝料の請求は必ずしも裁判でおこなわれるわけではなく、内容証明郵便を利用して不倫慰謝料を請求する旨を相手に伝えるといったケースも多いです。
その場合、慰謝料の金額や無視した際は法的手段をとる旨等が記載されています。
内容証明郵便を送ってくる目的
前述の通り、内容証明郵便は誰にいつどんな内容の文書を送り受け取ったかを証明できる郵便サービスです。
「届いていない」や「内容が違う」といった言い逃れはできず、裁判における証拠としても用いることができます。
そのため、不倫の慰謝料請求の内容証明を送る目的としては、
・相手に慰謝料を請求する意思を伝えた事実を証明したい
・相手にプレッシャーを与えたい
といった目的が考えられます。
内容証明郵便に法的効力はある?
繰り返しになりますが、内容証明郵便には裁判上の証拠能力があります。
これは、差出人・受取人・送った日時・受け取った(受け取り拒否した)日時・文書の内容を証明できるという意味で、文書の内容の正当性が証明できるわけではありません。
そのため、内容証明郵便に記載されている内容を守らなかったとしても、直ちに財産を差し押さえられるといったことはありませんので、ご安心ください。
内容証明郵便に身に覚えが無かったら受取拒否してもいい?
内容証明郵便の受取拒否は可能です。
内容証明郵便は、署名または受領印をした上で本人が直接受け取る必要があるため、配達員へ受取拒否の旨を伝えれば、受取拒否日時の記録が残り、郵便は差出人へ返送されます。
不在通知を無視した場合は、一定期間郵便局で保管された後に差出人へ返送されます。
ただし、内容証明郵便は、受け取るまで文書の内容は分かりませんし、差出人に見覚えがなくても、代理人弁護士の氏名等が記載されている場合があります。
内容証明郵便を送付するということは、相手に慰謝料を請求する強い意志があるということですので、放置しておくと裁判などの法的手続をとられる可能性があります。
受け取らなかったからといって事態が好転する可能性は低いので、受取拒否はおすすめできません。
不倫の慰謝料請求の内容証明郵便を無視するデメリット
不倫の慰謝料請求の内容証明は、法的な強制力はないものの、無視をすることで以下のような窮地に立たされる可能性があります。
不倫をすれば慰謝料の支払いは避けられない
不倫の慰謝料を内容証明郵便で請求された場合、無視してはいけない大前提として、「慰謝料を支払わなければならない」、という点を忘れてはいけません。
既婚者と知りながら肉体関係を結ぶことは、不法行為に該当します。
したがって、後述する慰謝料を支払わなくてもよい場合を除いては、慰謝料を請求されれば支払いに応じる必要があります。
内容証明郵便を無視しても、慰謝料の支払いから逃れることはできません。
請求に応じないから相手方が諦める可能性もありますが、内容証明を送付している時点で、慰謝料請求に相当の熱量を持っていますので、請求を無視したからといって請求を諦めるとは考えにくいです。
訴訟に発展する可能性がある
内容証明郵便自体には支払いを強制する力はありません。
しかし、内容証明郵便を無視して相手との交渉を避けていると、相手から裁判を起こされる可能性があります。
特に、内容証明郵便が弁護士の名前で送付されている場合は要注意です。
相手方が、弁護士に慰謝料請求についての交渉を一任しているということですので、内容証明郵便を無視すれば弁護士が次の一手を講じます。
多くの弁護士は、不貞行為の慰謝料を請求すべく、訴訟を提起します。
相手方が不倫の証拠を確保していれば、不倫をしていた方に慰謝料請求が命じられる可能性が高いです。
「どうせ慰謝料を請求されるなら、裁判になっても変わらないのでは」、と質問されることがあります。
確かに、裁判を起こされても、裁判にならなくても、相手方に慰謝料を支払う必要はあります。
しかし、裁判を起こされることで以下のようなデメリットが生じます。
裁判を起こされるデメリット
- 自分の弁護士に裁判のための費用を支払わなければならない
- 相手の弁護士費用の一部を負担しなければならない(慰謝料の支払いを命じる判決がなされた場合)
- 解決までに時間がかかる
- 大きなストレスになる
裁判になると裁判に対応するために弁護士を依頼する場合にはその費用がかかりますし、無駄な時間を費やすことになりますので、内容証明郵便が届いたら、無視をせずに今後の対応を弁護士に相談することを強くお勧めします。
内容証明郵便が届いた際の対応方法
内容証明郵便が届いたら、以下の手順で対応を進めましょう。
請求内容を確認する
まずは、内容証明郵便の内容を確認します。
そして、相手が何を請求しているのかをリストアップしてみましょう。
おそらく以下のような内容が記載されています。
- 不貞関係を持った日時や回数
- 請求者が精神的苦痛を受けたこと
- 慰謝料の金額
- 慰謝料の支払期限
- 振込先
- 支払わなければ法的措置を講じること
慰謝料を支払わなければならない事例かどうかを確認する
不倫をしたことが事実であっても、すべての場合で慰謝料を支払わなければならない訳ではありません。
以下のような場合では、慰謝料を支払う必要がないとされています。
慰謝料の請求に応じなくてもいい場合
- 不貞行為以前に相手の夫婦関係が破綻していた
- 既婚者であることを知らずに関係を持っていた
- 慰謝料請求の時効が到来している
- 肉体関係を強制された
- 性交渉等を伴う肉体関係ではなかった
以上のいずれかに該当する場合は、慰謝料の請求を拒否できる可能性がありますので、弁護士への相談をお勧めします。
慰謝料の金額が妥当かどうかを確認する
不貞行為の慰謝料の相場は、相手夫婦が離婚した場合でも200万円から300万円、離婚しなければ100万円から200万円が相場です。
したがってこの相場を大幅に超える慰謝料を請求されている場合は、減額できる可能性があります。
内容に問題がなければ示談書への署名捺印を求める
慰謝料を請求するべき事案であり、相手の請求金額が妥当であれば、相手の請求通りに慰謝料を支払います。
慰謝料の相場はあくまでも目安ですので、個々の事情によって減額できる可能性はあります。
請求された慰謝料の金額が相場の範囲をこえていない場合でも、念のため男女問題の取扱い実績が豊富な弁護士に相談しておきましょう。
また、慰謝料を支払う前に相手方と示談を成立させる必要があります。
示談書を作成して、相手方に署名捺印を依頼してください。
示談書を作成しておかなければ、さらなる賠償を求められるなどのトラブルが発生するおそれがあります。
反論したい場合は、弁護士に相談の上回答書を送付
以下の事例該当する場合は、相手方に回答書を送付する必要があります。
- 慰謝料を支払う必要がない場合
- 慰謝料の金額が相場を超えている場合
- 慰謝料請求の時効が到来している場合
- 慰謝料を一括で支払うことができない場合
回答書は以下の点に注意して作成しましょう。
回答書作成のポイント
- 内容証明郵便で送付する
- タイトルは「回答書」とする
- 肯定する部分と否定する部分を明確にする
- 慰謝料の支払いを拒む場合はその根拠を記載する
- 慰謝料の減額を求める場合は、その理由を記載する
- 回答期限を記載する
回答書の書き方がわからない、内容に問題がないか不安、という方は弁護士にご相談ください。
回答する際の注意点
内容証明郵便に対して回答する際は、届いた内容を認める場合も、反論したい場合にも、その回答内容によって相手がどのような反応をするかを十分に考えなくてはなりません。
例えば、早く解決したいと思って内容を全て認めることにしても、その後交渉が決裂した場合、回答した内容が事実ではなくても裁判等で相手方に有利な証拠として扱われる可能性があります。
逆に、反論することで相手をより怒らせてしまうことも考えられます。
不貞行為が事実であり慰謝料の請求に応じる場合は、請求者に対して謝罪の意を表明しましょう。
慰謝料の減額や分割支払いを申し入れる場合は、しっかりと謝罪しておくことで、申し入れが受け入れられやすくなります。
不貞行為を咎められ、慰謝料を請求されることは、決して気持ちがよいものではありませんが、不貞行為の被害者である請求者はさらに不快な思いをしていることが想定できますので、あなたの気持ちをそのままぶつけることは得策ではありません。
相手の気持ちを逆なでして、突然裁判を起こされるリスクもありますので、感情的な言葉は避けましょう。
不貞行為が事実であれば、冷静に謝罪を述べ、丁寧な対応を心がけましょう。
回答手段の選び方
相手への連絡方法は、電話やメール、手紙などいくつか選択肢があります。
電話での連絡は、直接声が届くことで謝罪の気持ちや細かいニュアンスが伝わりやすかったり、タイムラグのないやり取りができるメリットがありますが、一方で相手の話術や勢いに負けて余計な発言をしてしまったり、感情的なやり取りになりやすかったり、自身が加害者だという自覚がある方ほど不利な条件を受け入れることになってしまったりする恐れがあります。
メールや手紙は自分の主張をしっかりまとめてから回答することが可能ですが、慣れていなければ文章でのやり取りは大きな負担を感じてしまうでしょう。
どの方法を選択しても、録音データやメッセージのデータ、書類はどれも証拠として扱われる可能性があります。ご自身で問題なく対応できる自信がなければ、弁護士への相談も検討するのがおすすめです。
内容証明郵便だけでは強制執行(差押え等)をなされる可能性はない
繰り返しになりますが、内容証明郵便には法的な強制力はありません。
したがって、内容証明郵便で慰謝料を請求されて、それを無視しても、すぐに預貯金や給与が強制執行されることはありません。
預貯金や給与を差し押さえるためには、相手方は以下の手順を経る必要があります。
- 相手方が慰謝料請求訴訟を提起する
- 裁判官が、あなたに慰謝料の支払いを命じる旨の判決を言い渡す
- 相手方があなたの財産を調査する
- 相手方が裁判所に強制執行を申し立てる
- 財産の差押え
一般的には、これらの手続きが全て完了するまでの所要日数は数か月から数年です。
内容証明郵便を無視しただけでは、数日で預貯金や給与が差し押さえられることはありません。
不倫の慰謝料に関するお悩みは弁護士に相談
不倫の慰謝料を請求されてご自身での対応が難しいと考えている方、相手の請求に納得がいかないと考えている方、円満に解決したいと考えている方は弁護士にご相談ください。
不倫相手の配偶者から内容証明郵便で慰謝料を請求された場合、無視していると裁判を起こされる可能性があります。
裁判になると、裁判に対応するために弁護士に依頼した場合の費用が必要ですし、慰謝料の支払いを命じる判決がなされた場合には相手方の弁護士費用も一部負担しなければなりません。
また、裁判まで無視をしてしまうと、相手の請求が全て認められてしまい、本来支払うべき慰謝料よりも高額の慰謝料の支払いを命じられるおそれもあります。
慰謝料の支払いを命じる判決がなされた場合には、自分の財産に対する強制執行をされるおそれもあります。
弁護士であれば、事情を確認した上で、慰謝料を支払うべきかどうかを含めた適切な対応をアドバイス可能です。
慰謝料の支払いに応じる場合も、法的に有効な示談書を作成して、今後のトラブルを防止するための対策を講じることができます。
不倫の慰謝料請求でお悩みの方は、1人で抱え込まず、一度弁護士にご相談ください。
- 得意分野
- 企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業
明治大学法科大学院 修了
弁護士登録
都内の法律事務所に所属
大手信販会社にて社内弁護士として執務
大手金融機関にて社内弁護士として執務