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離婚における慰謝料の請求相場はいくら?請求できる条件やケースについて解説!

投稿日: 更新日: 弁護士 宮地 政和
離婚における慰謝料の請求相場はいくら?請求できる条件やケースについて解説!
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パートナーの浮気が原因で離婚する場合、離婚する際に慰謝料を請求するケースが多いですが、どれくらいの金額を請求してもいいのか、よくわからない人も多いのではないでしょうか。

できるだけ多くの慰謝料を請求したいと思う反面、あまりに高額すぎると、交渉でも裁判でも慰謝料が認められず、逆に金額が低額になってしまうのではないかと、心配になってしまうかと思います。

この記事では、離婚慰謝料の相場や慰謝料を請求する際の注意点、請求の流れや法的に有効な不貞行為の証拠について、わかりやすく解説していきます。

2種類の離婚慰謝料

離婚する際に請求できる慰謝料には、細かく分けると【離婚原因慰謝料】【離婚自体慰謝料】の2つの種類があります。

この2つの慰謝料をしっかり区別しておかないと、慰謝料請求の際に損をしてしまうおそれがあります。

以下では、それぞれどういう内容の慰謝料なのか、詳しく解説していきます。

離婚原因慰謝料

離婚原因慰謝料とは、直接離婚の原因となった行為により被った精神的苦痛に対する賠償を目的とした慰謝料です。

たとえば、不貞行為やDVが原因で離婚した場合の、不貞行為やDVによる精神的苦痛の賠償を目的とした慰謝料が、この離婚原因慰謝料にあたります。

なお、離婚原因慰謝料については、こちらの記事もご参照ください。

離婚自体慰謝料

離婚自体慰謝料とは、離婚それ自体により被った精神的苦痛に対する賠償を目的とした慰謝料です。

たとえば、不貞行為やDVが原因で離婚した場合、離婚原因慰謝料を請求することができますが、同時に離婚自体慰謝料も請求することができます。

なお、実際に裁判で慰謝料を請求する際には、それぞれの慰謝料を認めるための個別具体的な事情を考慮したうえで、まとめてひとつの「離婚慰謝料」として取り扱われることになります。

離婚の慰謝料が請求できるケース

離婚の慰謝料を請求するためには、離婚の原因が法律上の「不法行為」に該当する必要があります。

不法行為による損害賠償について、民法では以下のように規定されています。

 

(不法行為による損害賠償)

第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

参照:民法709条、710条|e-Gov法令検索

 

つまり、パートナーや不倫相手が、自分の意思で、法律上保護されている「平穏な夫婦生活を送る権利」を侵害した場合にはじめて、不法行為をおこなったとして慰謝料請求が認められることになります。

では、具体的にどのような行為であれば「不法行為」といえるのかについて、民法では法定離婚事由が定められています。

離婚するには夫婦お互いの同意がなければできないのが原則ですが、一定の事由が認められる場合、一方的に離婚が認められるケースがあります。これを「法定離婚事由」といいます。

この法定離婚事由があれば、パートナーに与える精神的苦痛が大きい「不法行為」として、慰謝料の請求が認められます。

民法で規定されている法定の離婚事由は、次の通りです。

(裁判上の離婚)

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
① 配偶者に不貞な行為があったとき。
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③ 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

参照:民法第770条|e-Gov法令検索

以下では、離婚慰謝料を請求できるそれぞれの事情について、詳しく解説していきます。

不貞行為があったとき

不貞行為とは、パートナー以外の異性と、自由な意思で肉体関係を持つことをいいます。

不貞行為は法定離婚事由のひとつです。パートナーの不貞行為により、「平穏な夫婦生活を送る権利」を侵害されたと認められる場合には、その精神的苦痛に対して慰謝料を請求することが可能です。

悪意の遺棄をされたとき

悪意の遺棄は法定の離婚事由にあたり、パートナーに与える精神的苦痛の程度が高いものとして、慰謝料の請求が認められます。

法律上、夫婦は「同居義務」「扶助義務」「婚姻費用分担義務」など、お互いに協力して生活をする義務を負っています。

(同居、協力及び扶助の義務)

第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

参照:民法第752条|e-Gov法令検索

正当な理由なく、これらの義務に違反した場合には、悪意の遺棄に該当し、慰謝料の請求が認められることになります。

悪意の遺棄にあたるものとして、たとえば次のようなものがあります。

  • 正当な理由なく別居する
  • 専業主婦(夫)であるパートナーに生活費を渡さない
  • DVでパートナーを家から追い出す
  • 不倫相手と同居して家庭を放置する
  • 正当な理由なく働かない
  • パートナーが病気の際に面倒をみない
  • 家事や育児を放棄する
  • 度重なる家出や失踪

ここで挙げた例以外にも、正当な理由なく夫婦で協力して生活する義務に違反したと認められる場合には、悪意の遺棄に該当し、精神的損害を賠償するための慰謝料が認められる可能性が高いでしょう。

DV・モラハラがあった場合

パートナーから殴る蹴るなどの暴行をされた場合や、長期間に渡り罵倒し続けられるなどのモラハラを受けたことが原因で離婚した場合には、慰謝料の請求が認められる可能性が高いでしょう。

DVやモラハラは、法定離婚事由のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当し、夫婦双方の同意がなくても離婚をすることができます。

一方的に性行為を拒否され続けた場合

正当な理由なく性行為を拒否し続けられた場合、その内容によっては、法定離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり、慰謝料が認められるケースがあります。

ただし、数回性行為を拒否された程度では慰謝料が認められる可能性が低く、また、病気が原因で性行為が難しい場合には、「一方的に性行為を拒否され続けた」とは認められない可能性があります。セックスレスであれば必ずしも慰謝料を請求できるわけではないことに、注意が必要です。

日常生活に支障をきたすほどの借金やギャンブル癖がある場合

趣味の買い物、競馬やパチンコなどのギャンブルで、日常生活に影響をきたすような場合には、その程度によって不貞行為の慰謝料が認められる可能性があります。

たとえば、ギャンブル依存症で、生活費を使い込んでしまうようであれば「悪意の遺棄」に該当する可能性がありますし、お金使いが荒すぎて家に生活費を全く入れてくれないようであれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する場合もあります。

ただし、ギャンブル依存症の場合、パートナーに資力が乏しい場合が多く、たとえ慰謝料が認められたとしても、現実的に回収が難しいケースもあることを頭に入れておきましょう。

離婚の慰謝料が請求できないケース

離婚する際に全てのケースで慰謝料を請求できるわけではなく、なかには慰謝料を請求できないケースも存在します。

離婚の慰謝料を請求できないおもなケースは、次の4つです。

離婚の慰謝料を請求できない4つのケース
  • お互いの性格の不一致
  • 健康問題が原因の場合
  • 信仰上の対立
  • お互いの親族間の仲の悪さ

以下、それぞれ確認していきましょう。

お互いの性格の不一致

パートナーとの性格の不一致が原因で離婚をする場合、それのみでは慰謝料の請求は認められません。

たとえ価値観が合わなかったとしても、どちらかの価値観に対して、違法性が認められるわけではないからです。

健康問題が原因の場合

パートナーの健康問題が原因で離婚する場合、健康状態によっては法定の離婚事由に該当する必要がありますが、それだけで慰謝料は認められません。

健康に問題があったからといって、それ自体に違法性があるとは言えないからです。

信仰上の対立

信仰上の対立が原因で離婚する場合も、慰謝料は認められないケースがほとんどです。

ある特定の信仰を持って生活することに対して、違法性が認められるわけではないからです。

お互いの親族間の仲の悪さ

お互いの親族間に不和があり、生活しづらくなったことが原因で離婚する場合にも、慰謝料の請求は認められません。

お互いの親族との仲が悪いというだけでは、不法な行為があったとは認められないからです。

離婚慰謝料の相場はいくら?

離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料の相場は、離婚の原因によって大きく異なります。

離婚原因ごとの慰謝料の相場は、以下の通りです。

浮気・不倫・不貞行為 100万円~300万円
悪意の遺棄 50万円~300万円
DV 50万円~500万円
性行為の拒否 0円~100万円
性格の不一致 0円~100万円

悪意の遺棄とは、平穏な夫婦生活が破たんすることを分かっていながら、別居したり、生活費を家に全く入れないことなど、パートナーと協力して共同生活を送る意思がないことを指します。

不貞行為や悪意の遺棄、DVなどは、パートナーに与える精神的苦痛の程度が高いことが多いため、認められる慰謝料の額も高額になる傾向にあります。

一方、セックスレスや性格の不一致の場合には、夫婦の両方に離婚の責任が認められるケースが少なくないため、認められる慰謝料の金額も低額になる傾向があります。

離婚慰謝料の算定要素

離婚慰謝料の金額を決定する際に考慮される事項は、たとえば次のようなものがあります。

慰謝料を請求する側の事情
  • 精神的苦痛の程度
  • 経済的にパートナーの支えを必要とするか
  • 結婚生活中にパートナーをどれくらい支えたか(家事、育児など)
  • 離婚の責任がこちらにもあるか
慰謝料を請求される側の事情
  • 不倫期間の長さ、不貞行為の回数・程度
  • 不倫の悪質性
  • 不倫したことを反省しているかどうか
  • 慰謝料の支払い能力
  • 社会的地位
  • 離婚したいか
  • 離婚の責任がどの程度認められるか
夫婦双方に共通する事情
  • 婚姻期間の長さ
  • 不貞行為の時点で夫婦関係が破綻していなかったか
  • 子どもの有無
  • 不倫相手との間に子どもがいるかどうか

離婚原因や内容によっては増減することも

離婚慰謝料を決定する際には、それぞれの事情の個別的な事情を総合的に考慮したうえで決定されます。

たとえば、結婚生活が20年以上で子どもが2人いるにもかかわらず、家計を顧みることなく不倫相手と半同棲状態にあり、最低限の生活費も入れていなかったような場合には、高額な慰謝料が認められる可能性が高いでしょう。

一方、新婚かつ不貞行為の回数も1回だけ、本人も心の底から反省し、今後も離婚せず婚姻生活を続けるような場合には、パートナーに与える精神的苦痛はそこまで大きくないと判断され、認められる慰謝料の金額も低額になる可能性が高いです。

相場からかけ離れた慰謝料請求はトラブルの原因になる

離婚慰謝料が認められるかどうかの話はあくまでも裁判での話であり、当事者同士で合意した金額であれば、基本的にいくらであっても問題ありません。

ただし、相場からあまりにもかけ離れた金額で慰謝料を請求すると、相手が慰謝料を認めないだけでなく、法外な慰謝料を請求してきたことによる怒りで交渉がスムーズに進まないおそれがあります。

たしかに、裁判になると低額な慰謝料しか見込めない場合には、話を大事にしたくない相手の心理を巧みに利用して交渉をすることで、高額な慰謝料を獲得できるケースも少なくありません。

しかし、あまりにも高額な慰謝料を請求すると、逆に相手も慰謝料を認めない態度を崩さなくなってしまい、裁判でしか慰謝料を請求できなくなってしまうおそれがあります。

離婚の慰謝料を請求するまでの流れ

離婚の慰謝料を請求する場合、おおむね次のような流れで進んでいきます。

離婚の慰謝料を請求するまでの流れ
  1. 離婚するかも含め、離婚の慰謝料について話し合う
  2. 話し合いがまとまれば「協議離婚」成立。まとまらなければ「離婚調停」に進む
  3. 離婚調停でもまとまらなければ「離婚裁判」に進む
  4. 裁判離婚で判決が出たら、慰謝料の支払い義務が生じる
  5. パートナーが慰謝料を支払わない場合には、強制執行の手続きをとり、財産や給料を差し押さえる

以下、【協議離婚】【調停離婚】【裁判離婚】の3つの段階について、解説していきます。

なお、話し合いで離婚手続きを進める「離婚審判」という手続きをとることもできますが、2週間以内に一方の当事者が異議を申し立てると、離婚審判が無効になってしまうことから、実務上はあまり利用されず、調停が不成立になった時点で裁判離婚を検討することになります。

協議離婚

パートナーに離婚の慰謝料を請求する場合、まずは夫婦で離婚のことや慰謝料のことを話し合うことになります。

離婚や慰謝料の請求は、当事者の合意があれば、調停や裁判を起こす必要はありません。夫婦間での協議の結果、離婚に合意し、慰謝料の金額や支払い方法にも納得するのであれば、この段階で協議離婚が成立することになります。

話し合いで離婚慰謝料についての取り決めをする場合、金額だけでなく、支払い方法や期限についても明確に定めておくようにしてください。とくに、支払い方法と期限については、曖昧なままにしておくといつまで経っても支払いをしてくれず、なかなか慰謝料の回収ができないことにもなりかねません。一括で支払ってもらうのがベストですが、相手の資力次第では、分割払いも視野に入れる必要があるでしょう。

慰謝料の金額が決まれば、離婚に伴う財産分与の際に、慰謝料分の財産を譲り受けることで解決できる場合もあります。たとえば、慰謝料300万円を請求するにあたって、貯金から慰謝料を支払ってもらうのが難しそうであれば、現金で150万円、残りの150万円は土地や家などをもらうことで、慰謝料相当額を回収することができるでしょう。

なお、協議離婚で慰謝料についての取り決めをした場合、合意内容は必ず書面で残しておくようにしてください。可能であれば公正証書として残しておくと、あとあと相手が慰謝料を支払ってくれなかった場合に、すぐに財産の差し押さえの手続きに移ることができます。合意書の内容は、記載内容を間違えると効力がなくなってしまうおそれがあるため、できれば専門家である弁護士に、記載内容を確認してもらうことをおすすめします。

調停離婚

話し合いで離婚条件についての話し合いがまとまらなかった場合、離婚調停をおこなって、話し合いでの解決を目指すことになります。

離婚調停は、裁判所の調停委員が夫婦の間に立ち、お互いの話を聞いたうえで適切なアドバイスをおこない、話し合いで離婚を成立させることを目指す手続きです。離婚裁判と違い、裁判所が離婚条件につき判断する訳ではなく、あくまでも話し合いでの離婚を目指す手続きなので、話し合いがまとまらない場合には調停不成立となり、離婚裁判を検討することになります。

離婚調停に回数について、とくに上限が決められているわけではないので、1回の期日で調停が成立する場合もあれば、6回、7回やっても話がまとまらず、1年以上調停を継続したうえで調停不成立になるケースも少なくありません。

調停離婚では、裁判所の調停委員を味方につけることが重要です。そのためには、慰謝料を請求できるだけの証拠を、しっかり提示する必要があります。証拠がしっかり提示されて、各種調停手続きを真面目におこなっていれば、調停委員がこちらに優位になるように話を進めてくれるでしょう。

裁判離婚

離婚調停でも話し合いがまとまらず、これ以上調停を続けても意味がないような場合には、離婚裁判を検討することになるでしょう。

裁判離婚では、お互いの主張や慰謝料請求の証拠を加味したうえで、裁判所が慰謝料請求の可否について判断することになります。

判決により慰謝料の支払い命令が出ると、その判決を基に相手から慰謝料の支払いを受けることができます。

慰謝料の金額など、判決の内容に不服がある場合には、2週間以内であれば、上級の裁判所に控訴することが可能です。

なお、離婚することについては話し合いで同意済みで、慰謝料の条件についてのみまとまっていない場合には、調停をしないでいきなり裁判に進む方法もあります。

慰謝料を請求するために必要な証拠

離婚慰謝料を請求するためには、パートナーの不法行為を証明するための証拠が重要です。

法的に有効な証拠には、次のようなものが挙げられます。

離婚慰謝料を請求するための証拠
  • 性行為そのものの動画や、ラブホテルに出入りしている写真
  • 肉体関係をほのめかすようなLINE・メール・SNSのやりとり
  • ラブホテルや旅行先のホテルの領収書
  • 探偵や興信所における不貞行為の調査報告書
  • DVやモラハラなどがおこなわれている動画
  • DVで負ったけがの診断書
  • 生活費を入れずにギャンブルに使っていることがわかる通帳 など

パートナーの不法行為を直接証明できる証拠がなかったとしても、間接的な証拠を複数提出することで、慰謝料が認められるケースもあります。

不貞行為の証拠を集める場合、肉体関係があったことを証明する必要があるため、抱き合っている写真やキスをしている写真だけでは、証拠としては不十分です。

また、DVが原因の場合、けがを負った部分の写真だけでは、暴力行為で負ったけがかどうかが判別できないため、証拠としては少し弱いです。暴力行為の動画や医師による診断書を併せて提出することで、慰謝料が認められる可能性が高くなるといえるでしょう。

証拠がないと慰謝料の請求が困難?

不法行為の証拠がない場合、相手に慰謝料を請求したとしても、つっぱねられてしまう可能性があります。

たとえば、不貞行為の慰謝料を請求するにしても、異性との親しげなLINEだけを証拠に相手を問い詰めても、「ただの友達とLINEをしているだけで、不倫をしているわけではない」と言われてしまうと、それ以上相手を追求することは難しくなります。

証拠が不十分なまま問い詰めると、逆にこちらの行為が平穏な夫婦生活を破壊しているとして、慰謝料を請求されてしまう可能性もあるでしょう。

また、DVやモラハラの場合、相手に不法行為をしている自覚がないケースも少なくありません。

たとえば、パートナーに暴力を振るったとしても、「それはパートナーのことを思って仕方なく暴力を振るっているだけで、今後の生活のためには大事なことなんだ」、などと言い訳をしてくる可能性があります。

モラハラに関しても、あくまでもパートナーの行動を正すためであり、精神的に追い詰めるつもりはない、と考えていることも多いです。

このようなケースの場合、当事者同士の話し合いでは埒が開かないため、裁判で不法な行為であることを認めてもらうために、どれだけ精神的な苦痛を被ってきたのかを証明する証拠が必要になるのです。

このように、離婚慰謝料を請求するには、どのようなケースでも必ず証拠が必要になります。離婚慰謝料請求をする前に、確実に証拠を集めておくことが重要です。

慰謝料請求する際の注意点

離婚慰謝料を請求する場合、証拠が重要なのはすでに述べた通りですが、他にも注意すべき点が存在します。

ここからは、離婚慰謝料を請求する際の注意点について解説していきます。

慰謝料請求の期限

離婚慰謝料には、請求できる期限が存在します。
法律上「時効」と呼ばれる請求期限ですが、離婚慰謝料の場合、離婚してから3年となっています。

会社の都合や子どもの手続きの関係で、とりあえず早めに離婚だけしたいと考える場合もあるでしょう。その場合、離婚してから3年以内に慰謝料の請求をするようにしてください。

養育費は別で請求できる

離婚する際に請求できるお金の中には養育費も含まれますが、養育費は慰謝料とはまったく別のお金になるため、慰謝料請求が認められるかどうかに関係なく請求できます。

養育費の支払いは親の義務です。離婚したとしても、親が子どもを経済的に援助していかなければならないことは変わりません。そのため、子どもがいて、かつ今後子どもを育てていくのであれば、慰謝料と併せて養育費も請求することができます。

なお、相手にお金がない場合には、養育費の毎月の支払いが滞る可能性もあります。その場合、離婚慰謝料と同じように強制執行の手続きをとることで、相手の財産から強制的に養育費を回収することも可能です。

相手の年収が低くても慰謝料を請求できる

相手の年収が低いからといって、慰謝料の請求を諦めないでください。慰謝料の請求は、相手の年収や借金の有無にかかわらず請求することができます。

ただし、相手の年収が極端に低い場合には、相手の支払い能力を考慮して、認められる慰謝料の額に影響が出る可能性があります。

また、仮に高額な慰謝料が認められたとしても、相手に貯蓄がないのであれば、一括での支払いは難しいことが多いでしょう。その場合、分割での支払いになるか、もしくは、強制執行の手続きをおこない、相手の財産を強制的に差し押さえることを検討することになります。

離婚の慰謝料請求は弁護士に依頼すべき?

慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

相手に慰謝料を請求するような経験は、人生でも何度もあるわけではありません。

慣れていない手続きで時間をかけ、精神をすり減らしてしまうのであれば、専門家である弁護士に対応を依頼することをおすすめします。

ここからは、離婚の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットについて解説していきます。

離婚に関する手続きを全て任せることができる

弁護士は、法律の専門家であり、離婚手続きや慰謝料の交渉について熟知しています。そのため、面倒な手続きは全て任せることができます。

慰謝料を請求するためには、パートナーや不倫相手と慰謝料の交渉をする必要があります。不貞行為をおこなったパートナーと慰謝料の交渉をするだけで精神的に疲弊してしまう可能性もありますし、DVをおこなった相手に対して交渉をする場合、相手の逆鱗に触れてまた暴力行為を受けてしまう可能性もあります。弁護士であれば、交渉に関する全てのことを任せることができるため、精神的にも非常に安心できるでしょう。

また、仕事や家事、育児で忙しい中で、1人で調停や裁判などの複雑な手続きを進めていくのは、難しいことが多いでしょう。裁判では難しい法律用語が使われることも多く、慰謝料請求をあきらめてしまうケースも少なくありません。

弁護士であれば全ての手続きを代行することができます。不貞行為の証拠集めのアドバイスをもらうところから、実際に相手から慰謝料を回収するところまで弁護士が代行してくれることを考えると、味方がいないまま自分1人で手続きを進めるよりも、格段にメリットが大きいものといえるでしょう。

離婚協議書を作成してもらえる

離婚協議で話し合いがまとまった際に作成する、離婚協議書を作成してもらうことができます。

離婚協議書には、離婚条件について詳細に記載され、慰謝料の額や支払い方法、期限などについて記載することになりますが、記載方法を間違えてしまうと法的な効果がなくなってしまう可能性があるため、正確に合意内容を記載する必要があります。

法律の専門家である弁護士であれば、法的に有効な離婚協議書を作成してもらえるだけでなく、相手との書面の取り交わしの作業も代行でおこなってもらうことができます。

適切な慰謝料を請求できる

高額な慰謝料を認めてもらうためには、適切な証拠と過去の裁判例に基づいた的確な主張をベースに、裁判ではなく交渉で慰謝料を請求することがポイントです。その点、法律と交渉の専門家である弁護士であれば、調停や裁判まで見越した交渉をおこなうことで、慰謝料の金額を増額できるケースが多いです。

また、相手としても、個人ではなく弁護士が出てくることで、多少お金を払ってでも話を早く終わらせたいと考えるケースが多いため、意外とすぐに慰謝料の支払いが認められるケースも少なくありません。

心の支えになってくれる

離婚トラブルはセンシティブな問題で、なかなか他人に相談できずに悩んでしまうケースが非常に多いです。協議離婚が思うように進まず、調停や裁判に進んでいくとなると、長いケースだと1年以上時間がかかってしまうケースも少なくありません。話がまとまらず、時間が経てば立つほど精神的に疲弊してしまい、全て投げ出したくなってしまうこともあるでしょう。

弁護士は、最後まで依頼者の味方です。相手から適正な慰謝料を獲得することはもちろん、精神的なケアまでしっかりおこなってくれるのが、弁護士に対応を依頼する1番の理由になるでしょう。

弁護士に依頼した場合の費用相場と内訳

法律事務所により費用体系が異なりますが、おおむね以下の金額をベースに考えておくと良いでしょう。

法律相談料 30分 5,000円〜
※初回無料の事務所もあります
離婚協議
離婚調停
着手金 10万円~30万円
報酬金 以下のいずれか
・20万円~50万円
・得られた経済的利益の10%〜20%
離婚裁判 着手金 30万円~50万円
報酬金 以下のいずれか
・30万円~50万円
・得られた経済的利益の20%〜30%
日当 1万円~5万円
その他実費 数千円~数万円程度

※「経済的利益」とは、交渉、調停、裁判で、最終的に獲得した利益の合計金額のことを指します。

弁護士に依頼した場合の費用を支払うタイミング

事務所により異なりますが、ほとんどの場合、着手金は弁護士に依頼するタイミングで支払い、それ以外の報酬金や実費、日当に関しては、手続きが全て終了したタイミングで支払います。

なお、着手金に関しては、分割での支払いに応じてくれる事務所も多いため、どのタイミングでいくら支払う必要があるのかを、あらかじめしっかり確認しておくようにしてください。

弁護士費用を抑えるためには?

弁護士費用を少しでも抑えるためには、なるべく交渉の段階で話をまとめられるように、弁護士に相談する前からしっかり証拠を揃えておくのが良いでしょう。

調停や裁判に進むほど、追加着手金や報酬金の額、日当や実費などもかかってくるため、できるだけ交渉の段階で話をまとめて取り交わせもらえるかは、非常に重要です。

また、もともとの弁護士費用が安い事務所を選んだり、法律相談料や着手金が無料の事務所を選ぶのも有効です。経済的に弁護士に依頼するのが難しい方に対してリーガルサービスをおこなう、法テラスの「民事法律扶助」を利用する方法もあります。この制度を使えば、無料法律相談や弁護士費用の一時立替えなどの経済的援助を受けることができます。

よくある質問

ここまで離婚慰謝料について解説してきましたが、実際に慰謝料を請求したいと思った時、初めての方にとっては疑問に思う点も多いでしょう。

ここからは離婚慰謝料の請求について、弁護士との相談の中でよく聞かれる質問をピックアップしてご紹介していきます。ぜひご参考にしてください。

相手が慰謝料を支払えない場合はどうすればいいの?

経済的理由から、請求した慰謝料を相手が支払えない場合は、分割などの支払方法を検討する必要があります。

元々ないところから無理やり支払わせることはできないので、分割にしても支払が難しい場合は、慰謝料を相手が支払可能な額まで減額しなくてはならないケースもあります。

 

きちんと取り決めたはずの慰謝料が支払われない場合は、督促を行うとよいでしょう。

内容証明郵便を使用し、慰謝料の支払いを促す督促状を相手に送ることで、後々、督促した事実を立証することもできます。

書き方に不安があれば弁護士へ相談しましょう。

督促しても相手が慰謝料を支払わないのであれば、強制執行を申し立てるといった回収方法も考えられます。

強制執行とは、相手の給与や銀行預金、不動産などの財産を差し押さえることで、強制的に回収を行う手続のことです。

強制執行は、慰謝料債権について認めた判決や調停調書、慰謝料請求権について明記された公正証書などが必要となります。

もしも、慰謝料が支払われなかった時のことも考えて、公正証書を作成しておくのがよいでしょう。

受け取った慰謝料に税金はかかるの?

離婚慰謝料を請求して受け取った金銭には、原則として税金はかかりません。

慰謝料は精神的苦痛を補うためのものであり、受け取ったことで利益が生じるものではないためです。

ただし、受け取った慰謝料が一般的な相場に対してあまりにも高額な場合や、金銭ではなく不動産や株式等を慰謝料として受け取る場合は、税金がかかる可能性もありますので、事前にしっかりと確認しましょう。

配偶者以外から離婚慰謝料を請求することはできる?

離婚をする際に慰謝料請求ができるのは、基本的に配偶者のみとなります。

ただし、離婚によって子どもが直接的に精神的苦痛を負ったといえる特別な理由がある場合等は、慰謝料請求ができる可能性もあります。

配偶者以外からの慰謝料請求を考えている場合は、一度弁護士へ相談することをおすすめします。

子どもがいると慰謝料が増額されるの?

「離婚慰謝料の算定要素」の中でも挙げましたが、基本的に、未成年の子どもがいる家庭、また子どもの人数が多い家庭の方が離婚における精神的苦痛が大きいと考えられており、慰謝料も増額されやすいといえます。

ただし、子ども一人につきいくら増額といった決まりはありませんし、あくまでも慰謝料の算定要素ひとつですので、そういった傾向があるという程度に捉えておくのがよいでしょう。

 

他にも疑問に思うことがあれば、お気兼ねなく弁護士へご相談ください。

まとめ

離婚の慰謝料には、【離婚原因慰謝料】と【離婚自体慰謝料】の2種類があり、2つ合わせて相場は100万円から300万円程度です。

離婚慰謝料を請求するためには、相手の不法行為で「平穏な夫婦生活を送る権利」を侵害され、精神的苦痛を被ったといえる必要があります。

できる限り高額な慰謝料を請求するためには、慰謝料の相場や過去の裁判例を駆使し、法的に有効な証拠を用いて、冷静に相手と交渉できる巧みな交渉術を併せ持っている必要があります。個人で交渉してもなかなか交渉がスムーズに行かず、途中で請求をあきらめてしまうケースも少なくありません。相手が不法行為をしているにもかかわらず、泣き寝入りすることにならないように、離婚の慰謝料は弁護士に相談することをおすすめします。

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宮地 政和
執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
人生で弁護士に相談するような機会は少なく、精神的にも相当な負担を抱えておられる状況だと思います。そういった方々が少しでも早期に負担を軽くできるよう、ご相談者様の立場に立って丁寧にサポートさせていただきます。
得意分野
企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
プロフィール
岡山大学法学部 卒業
明治大学法科大学院 修了
弁護士登録
都内の法律事務所に所属
大手信販会社にて社内弁護士として執務
大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社
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